中国法務コラム

【中国法務コラム】中国における契約の解除事由

2017-06-28

【ご質問】中国の「契約法」においては、どのような場合に契約を解除することができることになっていますか。

契約の解除に関して、中国の「契約法」は、まず合意解除について規定しています。「契約法」によると、契約当事者は、合意をすれば、理由の如何を問わず、いつでも契約を解除することができます(「契約法」第93条第1項)。

解除の合意ができない場合は、いずれかの契約当事者が一方的に契約を解除することになりますが、一方的な契約の解除は一定の解除事由がなければすることができません。解除事由は、当事者の約定したものか、法定のものかによって、約定解除事由と法定解除事由が分類されます。

1.約定解除事由

 「約定解除事由」とは、契約当事者が契約書その他において予め約定した契約解除の根拠となる事由をいいます。約定解除事由が発生した場合、契約当事者はこれを理由として契約を一方的に解除することができます(「契約法」第93条第2項)。

「契約法」には、約定解除事由の内容を直接制限する規定はありません。したがって、公平の原則など一般原則に違反する事情がなければ、契約当事者は、契約の内容に応じて相応の約定解除事由を合意することできます。

 

2.法定解除事由

 「法定解除事由」とは、法律の定める契約解除の根拠となる事由をいいます。契約当事者は、約定解除事由を約定していなくても、法定解除事由があれば、契約を一方的に解除することができます(「契約法」第94条等)。

「契約法」は、「総則」で各種契約に共通の法定解除事由を定めるほか、「各則」でいくつかの典型的な契約に特殊な法定解除事由を規定しています。

 

3.各種契約に共通の法定解除事由

 「契約法」の「総則」が規定する各種契約に共通の法定解除事由は以下のとおりです(「契約法」第94条)。

  1. 不可抗力により契約の目的を実現できなくなった場合
  2. 履行期限が到来する前に、一方当事者が主要な債務の不履行を明確に表示し又は自己の行為をもって表明した場合
  3. 一方当事者が主要な債務の履行を遅延し、催告を経た後も合理的な期間内に履行しなかった場合
  4. 一方当事者に債務の履行遅延又はその他の違約行為があるために、契約の目的を実現できなくなった場
  5. 法律が規定するその他の情況

上記a.の場合は、いずれの当事者も契約を解除することができます。 b.~e.の場合は、他方の当事者が契約を解除することができます。

上記のほか、「契約法」及びその司法解釈は、各種契約に共通の法定解除事由として以下の事由を規定しています。

(1) 不安の抗弁権に基づく契約の解除

「不安の抗弁権」とは、相手方当事者の財産状態の悪化などによる反対給付の履行が不確かであることを理由として、先履行義務を負う契約の当事者が自らの履行を留保する権利をいいます。中国の「契約法」は、この不安の抗弁権を明文で定めており、不安の抗弁権に基づき先履行義務の履行を中止したにもかかわらず、相手当事者が合理的な期間内に履行能力を回復できない場合又は適切な担保を提供しない場合には、履行を中止した当事者は契約を解除することができます(「契約法」第68条、第69条)。

(2) 事情変更の原則に基づく契約の解除

「契約法」の司法解釈によると、契約の成立後に客観的事情に重大な変化が生じ、契約の履行を継続することが一方当事者にとって明らかに不公平となった場合又は契約目的の実現が不可能となった場合、当事者は、人民法院に契約の解除を求めることができます。但し、客観的事情の変化が、当事者が契約の締結時に予見できず、不可抗力に起因するものではなく、商業リスクにも属さないことが条件となります。この場合には、人民法院が契約の解除をするか否かを確定します(「『契約法』の適用の若干問題に関する解釈(二)」第26条)。

4.典型契約に特殊な解除事由

 (1) 売買契約

売買契約に関しては、売買代金が分割払いされる場合、未払代金額が代金総額の5分の1に達したときは、売主は契約を解除することができます(「契約法」第167条)。

(2) 金銭消費貸借契約

金銭消費貸借契約の借主が契約で定める借入金の用途に従い借入金を使用しない場合、貸主は契約を解除することができます(「契約法」第203条)

(3) 賃貸借契約

賃貸借契約の賃借人が賃貸人の同意を得ることなく賃借物を転貸した場合、賃貸人は契約を解除することができます(「契約法」第224条第2項)。

(4) 請負契約

請負契約の場合、請負人が請け負った仕事の主要な部分を原則として自ら完成しなければなりません。注文者の同意を得ることなく、仕事の主要部分を第三者に委託した場合には、注文者は契約を解除することができます(「契約法」第253条)。

5.契約の解除及びその効果

契約を解除する場合は、相手方に通知をしなければなりません。契約は解除の通知が相手方に到達したときに効力を生じます(「契約法」第96条第1項)。

契約が解除された場合には、未履行の債務は消滅します。すでに履行された債務については、履行の情況及び契約の性質に基づき、原状回復その他の救済を請求することができますし、損害賠償を請求することもできます(「契約法」第97条)。

(H&H中国法令情報No.51(2017/6/15)掲載)

【中国法務コラム】中国の時効制度

2015-08-28

 

【ご質問】 中国では債権の消滅時効期間は2年と聞いています。債権が時効にかからないようにするには、どうすればいいのでしょうか。

 

1.中国の時効制度

 中国では、「民法通則」が民事債権の「訴訟時効」(日本の消滅時効)について原則的な規定を置いています。これによると、債権の訴訟時効期間は原則として2年です(「民法通則」第135条)が、以下の債権の訴訟時効期間は1年とされています(同第136条)。

  1. 身体傷害を理由とする賠償請求権
  2. 品質不合格の商品を販売し、それを告知していない販売者に対する請求権
  3. 賃借料の請求権
  4. 寄託物の紛失・毀損を理由とする賠償請求権

 なお、他の法律に別段の規定がある場合はそれを従います。例えば、国際貨物売買契約や技術輸出入契約に基づく債権の訴訟時効期間は、「契約法」第129条の規定により4年に延長されています。

 

 2.時効の中断

  時効については、日本と同様、中国でも「時効の中断」が認められています。「時効の中断」というのは、時効の進行を中断し、改めて最初から時効を進行させる制度をいいますが、中国の「民法通則」は、以下の3つを時効の中断事由として規定しています(第140条)。

  1. 訴訟の提起
  2. 債務者に対する要求
  3. 債務者による履行の承諾

 したがって、例えば売掛債権が時効にかかりそうになっている場合には、上記のいずれかにより時効の進行を中断する必要がありますが、(a.)の訴訟の提起は時間も費用もかかりますし、(c.)の履行の承諾は相手方が同意しないと得られませんから、(b.)の債務者に対する要求(催告)をするのが通常です。

 

3. 「催告」の方法

 日本では、このような場合、内容証明郵便で「催告書」を送るのが通常ですが、中国には内容証明郵便制度はありませんから、催告したことを後日証明できるようにするために、「催告書」の原本を郵送するとともに、そのコピーを電子メールで送信する等の方法が採用されることになります。

 債務者が行方不明の場合は、公示により催告することができますが、公示は、国家レベル又は債務者所在地の省レベルの影響力がある新聞等でしなければなりません(「民事案件の審理における訴訟時効制度の適用に関する若干問題の規定」第10条第1項第3号)。

 なお、催告は、債務の保証人にもすることができます。保証人に対して催告をした場合は主たる債権者に対する関係でも時効が中断されます(「『民法通則』の執行貫徹における若干問題に関する意見(試行)」第173条第2項)。

 

 4.「催告」の効力

 日本でも「催告」は時効の中断事由とされていますが、債権者は、催告後6ヶ月以内に訴訟等を提起しなければならず、「催告」を繰り返しても、時効の完成を阻止することはできません。

 これに対し、中国の「民法通則」の下では、「催告」はそれだけで時効を中断することができます。したがって、「催告」をした後、売掛債権が再度時効にかかりそうになったら、債権者は、改めて催告をすることによって時効を中断することができます(「『民法通則』の執行貫徹における若干問題に関する意見(試行)」第173条第1項)。

(H&H中国法令情報No.42(2015/6/23)掲載)

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