【中国法務コラム】中国における会社董事の責任

2018-08-03

【ご質問】中国の会社の董事に選任された場合は、どのような義務と責任を負うことになるのでしょうか。

【回答】
中国において、外国企業が設立する外商投資企業は「有限責任公司」として設立されるのが通常です。「会社法」によると、有限責任公司の董事会は、株主会(または株主[1])に対して責任を負って会社の経営管理に関する重要事項を決定する議決機関であり、3名以上13名以下の董事により構成されます(「会社法」第44条第1項)。したがって、董事会は日本の会社の取締役会、董事は取締役に相当すると考えてよいでしょう。

1.会社及び株主に対する責任

董事は、法令または会社定款の規定に違反して会社または株主に損害を与えた場合には、
賠償責任を負わなければなりません(「会社法」第149条、第152条)。

中国の「会社法」その他の関係規定は、董事の義務及び責任について以下のような規定を置いています。

 (1) 会社に対する忠実・勤勉義務

「会社法」によると、董事は法令及び会社定款を遵守し、会社に対して忠実義務を及び勤勉義務を負います。

また、当然のことですが、その権限を利用して賄賂その他不法な収入を得たり、会社の財産を横領したりすることは禁止されています(「会社法」第147条)。

そのほか、「会社法」は、以下の行為を禁止しています(「会社法」第148条)。

・ 会社の資金を流用すること
・ 会社の資金を自己または他人の名義で開設した口座に預金すること
・ 会社定款の規定に違反し、株主会または董事会の承認を得ることなく、会社の資金
 を貸し付けまたは担保に供すること
・ 会社定款の規定に違反しまたは株主会の承認を得ることなく、会社と契約を締結し
 または取引をすること
・ 株主会の承認を得ることなく、職務上の便宜を利用して自己または他人のために
 会社の商機を奪い、在任する会社と同種の業務を自営しまたは他人のために経営する
 こと
・ 他人と会社との取引のコミッションを受け取り、自己のものとすること
・ 会社の機密を無断で開示すること
・ 会社に対する忠実義務に違反するその他の行為

なお、董事が忠実義務·または勤勉義務に違反し、企業を破産させた場合、当該董事は、民事責任を負わなければならず、破産手続が終了した日から3年間は企業の董事、監事、高級管理職に就くことができません(「企業破産法」第125条)。

 (2) 株主会への列席義務等

  株主から要求があった場合、董事は、株主会に列席し、株主の質問を受けなければ
  なりません。

  また、董事は、監事会または監事に関連状況及び資料を事実に即して提供しなければ
  ならず、監事会または監事の職権行使を妨害してはなりません(「会社法」第150条)。

 (3) 書類資料の作成・保管に対する義務

 董事が法に従って職責を履行せず、会社が「会社法」第33条、第97条に規定する会社の
 書類資料(定款、株主名簿、株主会議事録、董事会議事録等)を作成せず、
 または保管しなかった結果をもたらし、株主に損害が生じた場合、当該董事は
 賠償責任を負わなければなりません。
 (「『会社法』適用の若干問題に関する規定(四)」第12条)

2.会社が破産した場合の責任

会社が破産した場合、董事が以下の行為に直接関与していたときは、これにより利益を
害された会社債権者に対して賠償責任を負うことになります(「企業破産法」第128条)。

  1. 破産申立てが受理される前1年以内に会社が行った以下の行為(「企業破産法」第31条)
    1. 無償で財産を譲渡する行為
    2. 明らかに不当な価格で行った取引
    3. 物的担保のなかった債務について物的担保を提供する行為
    4. 期限未到来の債務を繰り上げてした弁済
    5. 債権の放棄

  2. 破産申立てが受理される前6か月以内に、破産原因が生じているにもかかわらず、会社が個別の債権者に対して行った弁済(「企業破産法」第32条)

  3. 債務を免れるために行った財産の隠匿もしくは移転行為、または債務を虚構し、もしくは不実の債務を承認する行為(「企業破産法」第33条)

 

3.株主の出資に関する責任

増資の際、株主が出資義務を全面的に履行せず、董事が上記忠実義務または勤勉義務を怠って
出資払込額を不足させた場合、当該董事は、会社の債権者に対し相応の責任を負わなければなりません。(「『会社法』適用の若干問題に関する規定(三)」第13条第4項、第14条)

株主が出資を引き揚げた場合、出資の引き揚げに協力した董事は、出資の返還及び会社の債務につき連帯責任を負うことになります(「『会社法』適用の若干問題に関する規定(三)」第14条)。

4.持分譲渡の譲受株主に対する責任

譲渡株主が持分を二重譲渡をしたこと等により譲受株主に損失が発生し、董事が登記変更手続を速やかに行わなかったことに過失がある場合、当該董事は譲受株主に対し相応の責任を負うことになります(「『会社法』適用の若干問題に関する規定(三)」第27条第2項)。

5.董事の免責

董事は董事会の構成員であり、董事会の決議を通して会社の経営管理に関与することになります。

このため、株式会社については、董事会の決議が法令、会社定款または株主総会決議に違反し、
会社に重大な損失与えた場合、決議に参加した董事は会社に対して賠償責任を負わなければなりません。

しかし、決議に際して異議を表明し、かつ議事録に記載されている場合には、董事はその責任を免除されることになっています(「会社法」第112条第3項)。

有限責任会社については、この種の明文規定はありません。しかし、董事会の不当議決について異議を述べ、議事録に異議を述べたことが記載されていれば、株式会社の場合と同様に責任を免除されるものと考えます。

 

[1]  外商投資企業のうち、中外合弁企業及び中外合作企業には株主会は設置されません(「中外合弁企業法」第6条、同「実施条例」第30条、「合作企業法」第12条、同「実施細則」第24条)。外資独資企業の場合も、出資者(株主)が1社(1人)のときは株主会は設置されません(「会社法」第61条)。これらの場合、董事会はその権限の行使につき株主(出資者)に対して責任を負うことになります。

(H&H最新法令情報No.57(2018/6/8)掲載)

 

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