【中国法務コラム】中外合弁企業出資持分の第三者への譲渡

2018-10-15

【ご質問】当社は、中国現地法人(中外合弁企業)の出資持分を第三者に譲渡する予定です。譲渡先はすでに決まっているのですが、他の合弁当事者の同意を得る必要はありますか。他の合弁当事者との間でどのように手続を進めればよいでしょうか。

【回答】
中国の「会社法」によると、有限責任会社の出資持分を株主(出資者)以外の第三者に譲渡する場合は、他の株主の過半数の同意を得なければなりません(「会社法」第71条第2項)。他の株主の同意を得て出資持分を第三者に譲渡する場合も、他の株主は譲渡される出資持分を優先的に購入する権利を有します(「会社法」第71条第2項、第3項)。

ご質問の中国現地法人は中外合弁企業であり、「会社法」上の「有限責任会社」に該当しますから、上記の規定は、中外合弁企業の出資持分の譲渡にも適用されます(「会社法」第217条)。したがって、ご質問の場合、他の合弁当事者が出資持分の購入を希望する場合、貴社はこれを拒否することはできません。

【解説】

  • 他の株主の同意権

「会社法」の規定によると、有限責任会社の出資持分を株主以外の第三者に譲渡する場合は、上述のとおり、他の株主の過半数の同意が必要となります。しかし、中外合弁企業については、「中外合弁経営企業法」が制定されており、同法が特別法として「会社法」に優先して適用されます。

「中外合弁経営企業法」には、「中外合弁当事者の登録資本(出資持分)を譲渡する場合は、各合弁当事者の同意を得なければならない」という規定がありますから、ご質問の場合は、この規定に従って、他の株主の全員の同意を得なければなりません(「中外合弁経営企業法」第4条第4項)。

他の株主の同意は、持分譲渡を実施する前に、株主以外の第三者に出資持分を譲渡することを書面の通知により求めることが要求されています(「会社法」第71条第2項)。ただ、最高人民法院が本年8月25日に公布し、9月1日から施行した「『会社法』の適用における若干問題に関する規定(四)」(以下「会社法司法解釈(四)」という)は「書面またはその他受領確認ができる合理的な方法により、同意を求めなければならない」と規定していますので、電子メール等の方法により持分譲渡の通知をすることも可能と考えられます(「会社法司法解釈(四)」第17条第1項前段)。

持分譲渡に同意しない他の株主からは、30日以内に不同意の通知がなされます。出資持分を譲渡しようとする株主が持分譲渡の通知をしたにもかかわらず、これを受領した他の株主が通知受領日から30日以内に回答しない場合、当該他の株主は、第三者への出資持分の譲渡に同意したものとみなされることになっているからです(「会社法」第71条第2項)。

持分譲渡に同意しない株主が半数以上に達したために、出資持分を譲渡しようとする株主が第三者に譲渡できない場合、同意しない株主は当該出資持分を購入しなければなりません。持分譲渡に同意しない株主がこれを購入しない場合、出資持分の譲渡に同意したものとみなされることになっています(「会社法」第71条第2項、「会社法司法解釈(四)」第17条第1項後段)。

  • 持分の優先購入権

他の株主の同意を得て出資持分が株主以外の第三者に譲渡されることとなった場合も、他の株主は、持分譲渡に同意したと否とにかかわらず、当該出資持分を当該第三者に対する条件と「同等の条件」で優先的に購入する権利を有します(「会社法」第71条第3項)。

したがって、出資持分を譲渡しようとする株主は、第三者に対する持分譲渡の条件を書面またはその他受領確認ができる合理的な方法により他の株主に通知しなければなりません。そして、他の株主が「同等の条件」で購入することを表明した場合には、他の株主に優先的に譲渡しなければなりません(「会社法司法解釈(四)」第17条第2項、第3項)。

複数の他の株主が購入を希望した場合は、協議により購入比率が決定されることになっています。協議が整わない場合は、当該複数の株主の出資比率により購入比率が決定されます(「会社法」第71条第3項)。

他の株主から提示された購入条件が第三者に対する条件と「同等の条件」であるか否かは、他の株主が購入を希望する出資持分の数量、価格、支払方法及び期限等の要素を考慮した上で決定されることになります(「会社法司法解釈(四)」第18条)。

優先購入権の行使期間については明確な規定がありませんので、定款に定めがあれば、定款が規定する行使期間によることになります。定款に定めがない場合又は定款の規定が不明確な場合は、出資持分を譲渡しようとする株主が、他の株主に対する通知で行使期間を定めることができます。ただし、通知による行使期間は30日より短くすることはできません。起算日は、通知が他の株主に到達した日と解されています(「会社法司法解釈(四)」第19条)。

  • 定款の規定

中外合弁企業の出資持分の譲渡に関する他の株主の同意権、優先購入権に関する「会社法」等の法令の規定の要点は以上のとおりですが、会社の定款に別段の規定がある場合は、定款の規定が優先的に適用されることになっています。したがって、定款に上記と異なる規定がある場合は、法令により定款の規定により変更できないことが明記されている場合を除き、定款の規定が優先することになりますので、留意する必要があります。

(H&H最新法令情報No.54(2017/11/17)掲載)

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