【中国法務コラム】売買契約における所有権留保条項

2018-10-19

【ご質問】 中国で売買契約に所有権留保特約を付けた場合、日本法の下での所有権留保と同様の効力が認められますか。

【回答】
所有権留保は、売買契約において目的物が買主に引渡された後も一定の条件が充たされるまで(たとえば、売買代金が完済されるまで)、売主がその所有権を留保する制度です。売買代金が分割払いされる場合等に、売主の債権の担保として利用されます。

  • 所有権留保に関する規定

 中国の「契約法」第134条は次のように規定して、売買の目的物について所有権を留保することを認めています。

「当事者は、売買契約において、買主が代金の支払い又はその他の義務を履行しない場合、目的物の所有権が買主に属する旨を約定することができる。」

これによると、中国では、所有権留保特約が無制限に認められるように見えますが、そうではありません。所有権留保特約については、「最高人民法院の売買契約紛争案件の審理における法律適用問題に関する解釈」(以下「司法解釈」という)により一定の制限が加えられています。

  • 不動産売買契約への不適用

 まず注意しなければならないのは、不動産の売買契約については所有権留保特約をしても効力が認められないことです。「司法解釈」第34条は、次のように規定しています。

「売買の当事者が契約法第134条の目的物の所有権の留保に関する規定を不動産に適用することを主張した場合、人民法院はこれを支持しない。」

したがって、不動産の売買代金が分割払いされる場合には、売主は所有権留保以外の方法で代金の支払いを担保することを検討しなければなりません。

  • 売主の取戻権とその制限

 所有権留保特約がある場合において、目的物の所有権が移転する前に買主が以下のいずれかの行為により売主に損害を及ぼしたときは、売主は目的物を買主から取り戻すことができます(「司法解釈」第35条第1項)。

(1)約定に従って代金を支払わない場合
(2)約定に従って特定の条件を完了させない場合
(3)目的物の売却、質入れ又はその他の不当な処分をした場合

しかし、次の場合には、売主は取戻権を行使することはできません(「司法解釈」第36条)。

(a)買主が目的物の代金総額の75%以上を支払っている場合
(b)買主が目的物を売却、質入れ又はその他の処分をし、第三者が目的物の所有権又はその他の物権を善意取得した場合

上記(a)の制限は日本法にはない制限なので、特に注意する必要があります。

  • 買主の受戻権による制限

 売主が目的物を取り戻した場合であっても、買主は、取り戻しの原因となった事由を一定の期間内に解消すれば目的物を受け戻すことができます(「司法解釈」第37条第1項)。たとえば、買主が代金を期限に弁済しなかったために売主が目的物を取り戻したような場合でも、買主は、一定の期間内に約束の代金を支払えば、目的物を引き渡すように要求することができます。

受戻権を行使することができる「一定の期間」は、買主と売主が協議により合意するか又は売主が指定することができます。この受戻権行使期間内に買主が目的物を取り戻さない場合には、売主は目的物を別途再売却することができます(「司法解釈」第37条第2項)。換言すると、売主は、受戻権行使期間が経過するまで目的物を第三者に再売却することができません。この点も日本法とは大きく異なりますので、注意する必要があります。

  •  目的物の再売却と清算義務

 売主が取り戻した目的物を第三者に売却した場合、売主には清算義務があります。すなわち、売主は、再売却代金から、①目的物の取戻し及び保管費用、②再売却の費用、③利息、④元の買主の未払代金を順次控除し、余剰がある場合は、それを元の買主に返還しなければなりません(「司法解釈」第37条第3項前段)。

 再売却代金が上記費用等の合計額に不足する場合、売主は元の買主に賠償を請求することができます(「司法解釈」第37条第3項前段)。但し、元の買主が売主による第三者への売却価格が市場価格より明らかに低いことを証明した場合には、元の買主はその限度で賠償義務を免除されることになります。

なお、目的物を再売却する前であっても、取り戻した目的物の価値が著しく減少している場合には、売主は買主に損失の賠償を要求することができます(「司法解釈」第35条第2項)。

(「H&H中国最新法令情報」(No. 50) 2017/4/28掲載)

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