【中国法務コラム】売買契約における売主の担保責任

2018-10-24

【ご質問】 当社は中国の工場から製品を購入しています。しかし、取引は注文書と受注書だけで行っており、正式な契約書を締結していません。このような場合、中国法上、中国の工場は製品の瑕疵についてどのような責任を負うのでしょうか。

【回答】

  • 売主の担保責任

売買契約の売主は、売買の目的物及びその所有権を買主に引き渡す義務を負います(「契約法」第130条、第135条)。売買の目的物に「権利の瑕疵」(売買の目的物について、第三者が買主に対して権利を主張する状態にあること)や「物的な瑕疵」(売買の目的物について、契約で定める品質基準に達しないこと)がある場合は、売主に一定の責任が発生します。これを売主の担保責任といいます。

  • 権利の瑕疵担保責任

売主は、売買の目的物につき、第三者が買主に対しいかなる権利も主張しないことを保証する義務を負います(「契約法」第150条)。売主がこの義務に違反した場合、買主は次のような措置をとることができます。

  1. 第三者が目的物について権利を主張する可能性を証明する確実な証拠がある場合、代金の支払いを留保することができます(「契約法」152条)。
  2. 第三者が目的物につき権利を主張し、買主に損害が生じた場合、売主に対して契約の解除及び損害賠償請求等を請求することができます。ただし、買主が契約の締結時に第三者が売買の目的物について知的財産権、担保権等の権利を有していることについて知り、又は知ることができたときはこの限りではありません(「契約法」第151条)。

権利の瑕疵担保責任は任意規定とされていますので、当事者の合意によりその責任を減免することができます。ただし、売主が故意又は重大な過失により買主に目的物の瑕疵を知らせなかった場合には、その売主は責任の減免を主張することはできません(「売買契約紛争事件の審理における法律適用の問題に関する解釈」第32条)。

  • 物の瑕疵担保責任

中国法では、物の瑕疵担保責任は品質保証責任として理解されています。その具体的な内容は以下のとおりです。

  1. 品質基準

    契約の当事者は、契約において具体的な品質基準を定めることができます(「契約法」153条)。契約において品質基準を定めていない場合、又は契約の定めが不明確な場合には、当事者は品質基準について協議し、補充することができます。補充の合意ができない場合は、契約の関連条項又は取引慣行に従い確定します。これらに照らしても品質基準を確定できない場合、国家基準及び業界基準に従うことになりますが、国家基準及び業界基準がない場合には、通常の基準又は契約の目的に合致する特定の基準に基づき履行することになります(「契約法」第154条、第61条、第62条)。

    日本法では、種類物について、法律行為の性質又は当事者の意思によって品質を定めることができない場合、「中等の品質を有する物」を給付しなければならない(「民法」第401条第1項)とされていますが、中国法ではこれとは若干異なりますので注意が必要です。

  2. 目的物の検査

    検査期間が契約で定められている場合には、買主は約定の検査期間内に目的物の数量、品質を検査しなければなりません。目的物が品質基準に合致しない場合には、買主は遅滞なく売主に通知をする必要があります(「契約法」第157条、第158条第1項)。

    検査期間が契約で定められていない場合には、買主は遅滞なく検査を行わなければなりません。この場合、買主は、契約で定める基準に合致しないことを発見すべき合理的期間内に売主に通知をする必要があります(「契約法」第157条、第158条第2項)。買主が合理的期間内に通知をせず、又は目的物を受領した日から起算して2年以内(品質保証期間が別途定められている場合には、当該品質保証期間内)に売主に通知しない場合には、目的物の数量及び品質は契約の定めに合致していたものとみなされ、売主に対して責任を追及することはできなくなります(「契約法」第158条第2項)。

  3. 品質保証責任の内容

売主が、目的物の品質保証義務に違反した場合、買主は次の措置をとることができます

① 売主の品質保証義務の違反により、契約の目的が実現不能となった場合、買主は製品の受領を拒絶し、又は契約を解除することできます(「契約法」148条)。

② 当事者間で品質保証責任に関する約定がある場合には、約定に基づき売主の違約責任を追及することができます。

③ 当事者間で品質保証責任に関する約定がない場合には、買主は、目的物の性質及び損害の程度に応じて、修理、交換、再給付、返品、代金又は報酬の減額等を合理的に選択して請求することができます(「契約法」第111条)。

なお、当事者は、品質保証責任を減免する約定をすることができますが、人身上の損害についての免責、売主に故意又は重過失がある場合の免責は、無効となります(「契約法」53条)。

このように中国法には売主の担保責任に関する規定がありますが、上述のとおり、当事者間の約定が優先適用されます。したがって、売買契約書を作成する際には、製品の品質基準、検査期間、不合格品が発見された場合の措置など、売主の担保責任に関する事項を明確に定めておくことが重要です。

(「H&H中国最新法令情報」(No.45)  2015/9/11掲載)

 

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